第1章 第1幕 第3王女ティアナ姫
《ススキside》
そして今にいたる。始めは姫さんの脱走を阻止するのも苦労したがだんだんコツを掴んで捕まえるのも楽になっていった。
「んー!楽しかったー!」
「楽しかったって…捕まえる身にもなってくれ、姫さん」
馬を走らせながら背後から喋る姫さんに思わずため息が出る。城下町に遊びに行くのは別にいいのだが、脱走して城下町に行くのはやめてほしい。
「いいじゃん!ススキも楽しかったでしょー?」
ギュッと俺の腰に回していた手に力が籠もった。姫さんと密着することは日常から多々あるが、毎度ドキッとする自分がいる。
「ま、まあ…」
「ちゃんと怒られるからさー」
「はいはい」
脱走を阻止はするものの姫さんの遊びに結局付き合っている。城に戻ればいつものごとく世話役のソフィアにこっぴどく叱られる。それが日常。
次の日
「ススキー?」
「?はい」
姫さんに呼ばれ、部屋に入るといつもとは違う衣装を着ている姫さんがいた。今日は何かあっただろうか。
「ススキ…背中のファスナー上げて…!」
「あーはいはい」
髪をまとめてひたすら背中のファスナーを上げようとしてる姫さん。右手、スッゴいプルプル震えてるけど。笑いを抑えながらファスナーを上げる。
「今日何かあるのか?」
「あ、まだ言ってなかったのよね、今日姉さんが帰ってくるのよ」
「姉さん…?確か、二人いたよな?」
「うん、第1王女のレベッカ姉さんよ」
「それでいつもと違う衣装って訳か」
「そうそうーうーん…髪どうしよう」
下ろしたままの髪を触りながら唸っている姫さんに俺が提案した。
「俺が結おうか?髪」
「え?!ススキ、出来るの?!」
めっちゃ驚いた顔して振り返られたので前向けと言って顔を鏡に向かせる。これでも一通りこなせるように教えられた。
「意外ねーススキが髪結えるなんて」
「まだ町に住んでた頃は近所の子供達の面倒見てたんで」
「ふふふっなるほど」
可笑しそうに笑う姫さんの顔が鏡に写る。第1王女のレベッカ様を迎える準備のせいかソフィアもメイド達もいない。こうゆう時はいつも俺が姫さんの世話をする。