第1章 第1幕 第3王女ティアナ姫
結った髪を解いて着替え始めたので自分もいつもの服に着替える為、別室へ行き、着替えてから馬を用意しに馬小屋へ向かった。それから数分していつもの服装の姫さんが走ってきた。
「お待たせ!」
姫さんが馬は一頭でいいと言い、姫さんを後ろに乗せて、馬を走らせる。
「姫さんっ」
「なーにー?」
「レベッカ様と話さなくていいのか?」
「夜話すからいいのよーアップルパイも買って夜通し喋るわ」
その声からは楽しみにしている声音が確認出来た。少しは落ち着いたようだ。町に着き、馬を預けていつものようにパン屋に訪れようとした時…
「あ!姫様!」
「ルナ!」
2つ縛りの少女が何かを大事そうに抱えて姫さんに駆け寄ってきた。姫さんもどうやらその少女のことを知っているらしい。
「姫様、これ!」
大事そうに抱えていたものを姫さんに差し出した。中には手作りで作られた髪留めがあった。
「綺麗…私に?」
「うん!お父さんと一緒に作ったの!」
「ありがとうっ大事に使うわ」
姫さんは嬉しそうに笑ってそれを受け取った。少女は父親に嬉しそうに会話をしていた。それを眺めていた姫さんの瞳がチカッと光ったのが分かった。
「…姫さんっ」
姫さんの瞳が光るのは力を使う前の前兆だ。慌てて姫さんの目を目隠しする。そして耳元で静かに耳打ちする。
「…姫さん、ここで力は使っちゃダメでだ…」
「…っ」
姫さんは我に返ってしばらく目を瞬いてから俺を見た。
「ごめん、ススキ…」
「姫さん、連れて行きたい場所があるんだ、いいか?」
「え…?いいけど…」
「ついて来れるか?」
いつもの調子でニヤリと笑って見せると姫さんもまた理解したようでニヤリと笑って見せた。そこからは町を抜けて森に入る。走る速度は全然落ちることがなく、ある目的の場所まで後少し。
「ススキー!まだー?」
「もうちょいっ」
しばらくすると開けた場所に出た。そこ一面湖で太陽の光で水面がキラキラと宝石を散りばめたように光っていた。
「うわぁ…こんな場所あったんだ…知らなかった」
「俺のお気に入りの場所」
「綺麗…」
水面を覗き込んで見れば、中には水色の小さな花が咲いている。ここでしか見れないチミルの花だ。チミルは水の中にしか咲かない貴重な花で育てるのも難しいと言われている。