第1章 第1幕 第3王女ティアナ姫
「…まあ…そう、ですね」
はっきりと言えないは身分の違いだ。この国の王女とその側近じゃあ違いすぎる。いっそ自分が王族ならと何度思ったか。それでも背に腹は変えられない。
「ススキー!ススキも踊ろうよー!」
「俺はいいって…うおっ!」
姫さんにグイッと手を引かれて踊り子達の輪に加わる。楽しそうに踊る姫さんを見ていると自分も嬉しくなる。
「姫さん、踊れるじゃんか」
「社交ダンスよりかはねー」
そんな姫さんに会ったのは今から4年前。
4年前ー
俺は城下町に住む一人の青年だった。ただ、普通の青年ではなく並外れた身体能力を持った青年だった。その為か用心棒に使われたり、傭兵として戦に出たり、敵国のスパイをしたりと様々な内容をこなしていた。そんなある日、町の中央広場に求人情報が配られた。
「姫様の側近募集?」
「なんでさ?」
「姫様、よく脱走するからだろー?」
「そんなの監視するなんて意味ないだろーうちの姫様は」
「お前の姫様じゃないだろ」
俺の国の姫様のティアナ姫は城を脱走して城下町に遊びに来ることで有名だ。誰に教えられた訳でもないのによく脱走してくるのだ。俺も何度か見掛けたことがある。
「城下町にすら来ない国王に比べれば姫様の方がいいよなー?」
「違いねえ!」
ワハハと中央広場に笑いが湧き起こる。この国の民は国王より姫様の方が好きらしい。求人情報によるとやはりと言うべきかティアナ姫の脱走阻止が主な仕事らしい。
「…は?」
だが、一番目を引いたのはその給料だ。普通に町で稼いだって到底稼げない額だった。今まで色んな仕事をしてきたがここまでいい額の仕事はなかった。
「…これは決まりだな」