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紅眼の戦姫

第1章 第1幕 第3王女ティアナ姫


ポンッと肩を叩かれた。私を“姫さん”と呼ぶのは一人しかいない。天国から一気に地獄に落とされた感じがした。壊れたロボットみたいに首を回す。

「…早かったわね、ススキ」

笑顔のススキがそこにいた。だが、目は笑ってない。

「俺の脚なめんなよ…」

襟首を掴まれて強制的に店から出される。アップルパイまだ食べ終わってないのにー!!引きずられながらパイを頬張る。

「姫さん、帰るぞ」

「やーだー」

「子供じゃないんだから」

「…ススキってかっこいいけどモテないよね」

「姫さん、アップルパイ取り上げられたいか?」

「ごめんなさい」

アップルパイだけは嫌だ。すると微かに笛の音や太鼓を叩く音が聞こえてきた。どこかで大道芸でもやっているんだろうか。

「大道芸…か」

「ちょっと覗きに行こう!」

「あ!姫さん!」

緩んだ隙にススキの手から逃れ、音がする方へ走っていくとやはりと言うべきか人集りが出来ており、人集りの中心には踊り子達が綺麗に舞っていた。

「うわぁ…綺麗」

踊り子の舞にしばし目を奪われていると踊っている一人の踊り子に腕を引かれて中心に。

「え?私も踊るの?」

「姫様も踊りましょう!」

陽気なリズムに自然と身体が動く。社交ダンスより断然、こっちの方が踊れる。


《ススキside》

姫さんを追って人集りの中心に入って行くと踊り子達と一緒に姫さんも舞っていた。社交ダンスは出来ないのにこうゆうのは得意なんだよな、姫さんは。

「姫様、綺麗だな」

「楽しそうに踊ってるわ」

「姫様も他の国に嫁いでいっちまうのか…」

姫さんはこの国の民に愛されている。国王より、第1王子のキース様よりも。それは姫さんが毎日城を抜け出して城下町に遊びに行っているからだ。誰よりも国民を愛している。そんな姫さんが俺は好きだ。

「ススキじゃねーの、また姫さんのお守りかい?」

「まあ、そんなとこですよ」

隣にいた酒場のマスターが豪快に笑いながら話し掛けてきた。

「姫様こそ、この国に相応しい王なんだと思うんだよな」

「それは俺も同意ですよ」

「国民に愛されてこその王よ」

「姫さんはこの国、好きですからね」

「お前も姫様、好きだろ?」
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