第1章 第1幕 第3王女ティアナ姫
「ススキ止めといてくれるー?馬取ってくるからさー」
「しがない門番兵があのススキさん、止められると思いますー?」
「…無理」
「諦めて下さい、姫様」
「ぐぬぬ…」
ススキは私の側近だけあって城にいる兵士達はおろか、訓練を受けた騎士でさえ適わないのだ。城下町まで徒歩は辛いが…仕方ない。
「1秒くらいは止められるでしょ!」
「無理ですよー姫様ー!」
門番兵の嘆き声が聞こえるがそれを構うことなく城下町に向けて走っていく。ススキが馬で来たらそれこそおしまいだ。どうにか町まで行かないと。
ひたすら走ってやっと城下町に着いた。どうやらススキは私に追いつかなかったようで後ろを振り向いてもいなかった。よし!勝った!町まで来ると流石に人が沢山いる。私はこの町が好きだ、毎日出来立ての料理の匂いがするし、賑やかだし、皆は優しい。
「あ!姫様だ!今日も来てくれたの?」
町を歩けば色んな人に呼び止められたりする。少年が買い物籠を持って私に近付いてきた。どうやらお使いを頼まれたらしい。
「うん!今日はお使い?」
「そう!アップルパイ買いに行くんだよー姫様も一緒に来る?」
「アップルパイ!?行く行く!」
少年と手を繋ながら町一番美味しいと噂のあるパン屋に訪れる。中は焼きたてのパンの匂いでいっぱいで幸せになる。
「おや、姫様じゃないのー」
「こんにちはーおばさん!アップルパイある?」
「あるよーそこの子もかい?」
「うん、お願い出来る?」
「任せといて!」
おばさんは笑顔で奥に消えていった。店の中は出来立てのパンが沢山並んでいる。美味しそうなものばかりで目移りしてしまう。しばらくするとおばさんがアップルパイを持って戻ってきた。
「はい、姫様」
「ありがとー!美味しそう!」
「はい、僕」
「ありがとう!」
暖かい出来立てを貰って早速頬張る。リンゴの酸味と甘味が絶妙にマッチして外側のパイ生地と合う。幸せだわー!
「…幸せそうだね、姫さん」