第6章 two
翔はニコニコして台を降りていった。
台の下では、客が翔に向かってハイタッチを求めてる。
一緒に降りて行って、皆に礼を言いながら、VIPに入った。
ここはいつもガオが休憩用に貸してくれてるところだ。
中に入ったら、ガオが居た。
「おう。ごめんな。翔が飛び入りで…」
「いいよ。すっごい良かったから。何なら今度から一緒に回せば?」
くっくと笑いながらガオが紫煙を吐き出した。
「…で、こちらは?」
ガオの隣に、見慣れないメガネの男性が座っていた。
ニットにスエットとかなり地味な服装だ。
風間は無表情でガオの後ろに立っている。
「あ、紹介するね。榎本さん」
「ども…二宮です」
「ふふ…アンタのことスカウトにきたのよ」
「えっ…もしかしてこの前の話って」
「そう、俺のところです」
榎本という人は、メガネをくいっと引き上げた。
本当にこの人がクラブのオーナーなのか…?
ぜんっぜんそんな人に見えないんだけど。
「…よく、言われます。本当にクラブのオーナーなのかと」
「えっ…いやっ…その…」
隣で翔が不思議そうな顔をしてる。
「僕は好きなんです…音楽が…」
そう言って榎本さんは、こくりとドリンクを飲んだ。
「ここに以前来た時、あなたのDJを見て随分と感心しました。
今日は、あなたをガオから奪いにきましたよ」
「え…?」