第6章 two
智が3個目のジャズをぶっこんできた瞬間、卓に誰か飛び乗ってきた。
「翔!」
「かずくん!」
「おま…ちょ…ここ、狭い…」
ぐいぐい翔は身体を寄せてきて、卓をじっと見つめた。
「お前、ここ家じゃないからだめだぞ?」
そう言ってるのに、翔は離れようとしない。
とうとう智を押しのけ、俺の横に座り込んでしまった。
「翔って結構行動派なんだね…」
苦笑いしながら、智はレコードを選んでる。
翔はそれからじーっと俺が卓を操作するのを見つめていた。
俺が客を煽ったり、音をいじっているのをじっと見ている。
なんだか恥ずかしくなってきた。
「翔、あんま見んなや…」
「みます」
「は?」
「ぼくみます」
「あ、そ…」
フロアがだんだん熱くなってきたのを見計らって、一番盛り上がる曲でも掛けようとPCを覗いて操作してたら、いきなり翔の手が伸びてきた。
「あっ!翔だめだって!」
「いやー!」
そう言って翔の手は、卓を操作し始めた。
「ああああああ…」
急に調子が変わって、フロアからどよめきが起こる。
「いいじゃん、ちょっとやらせてやりなよ…」
智が翔の後ろから卓の操作をフォローしてやってる。