第6章 two
それから毎日、銭湯には行かないで翔とDJ卓で遊んだ。
大量にあるCDから翔の好きそうなのを選んで、翔のためのDJタイムだ。
観客は一人でもいい。
翔もDJ卓をいじって、一緒に音楽を作る。
たまに一曲まるまるいじってしまうこともあった。
「おま、曲の原型わかんねーよ」
そう言うと翔は凄く笑った。
そのうち、俺がなにもしなくてもすっかりと翔は卓の操作を覚えた。
PC卓まで覚えそうな勢いだった。
「お客さん…俺の仕事なくなりますぜ…」
「んー?かずくんのおしごと?」
「俺も触らせてよ。卓…」
「んふ…」
翔は音楽に身を任せながら、心のままに卓を操作する。
全く同じ音なんて生まれない。
それは俺も同じなんだけど、やっぱりどこか似たような感じにはなってくる。
だけど翔はそんなことなくて。
毎日違うDJに出会ってるみたいだった。
「お兄さん…もしかして、俺より才能おあり?」
「はい!」
がくっとずっこけて、翔を見つめた。
でも、ほんと面白いかも…
翔、Gravityで回せないかな。
もちろん俺が補助についてだけど。
翔にはアーティストなんてわからないんだから…