第6章 two
「先生が恵和にいた頃というのは、施設に警官が訪ねてくることはありましたか?」
「いいえ…そんなことはあまり…」
「ですよね。そんなわかりやすいことするわけないか」
「翔くんは…あの…こう言っちゃなんなんですが…」
「はい」
親父が真面目な顔をした。
「その。ものすごく上手だって…」
「え?なにが?」
親父が聞き返したけど、先生は真っ赤になって俯いた。
俺はそれを見て、なんだかわかって俯いた。
「あ?え?なんだよ…和也…」
「抜くのが上手かったんだってさ!」
「あ…」
三人で気不味くなった。
「あの。ですから、翔くんだったら、きっとお金積んででも買いたがる人はたくさんいるだろうって…」
きゅっと先生は手を握った。
「幹部がそう言ってるのを、同僚が聞いたそうです」
「そうですか…」
「あのそれで、思い出したんですけど」
「はい。なんでも聞かせて下さい」
「カジノ…やってたって…」
「カジノ…」
「学園の理事会がそうだったんじゃないかって話で…」
「え?そんなわかりやすいことしてたの?」
「それが摘発されなかったのは、警察の人間が噛んでるからじゃないかって…」