第6章 two
うちに風呂はあるんだけど、ユニットバスはやはり狭い。
週に何回か、俺達は近所の銭湯へ風呂に入りに行くようになった。
桶の中に小さなシャンプーとリンス、石鹸を入れて。
タオルとバスタオルを持って出かける。
翔と手を繋いで歩いていても、誰も振り返らない。
知的障害者とその保護者。
どっからどうみてもそう見えるだろう。
俺にとっては好都合で。
堂々と好きなヤツと手を繋いで歩けるなんて、こんないいことないから。
繋いだ手をぶんぶんと振りながら、ゆっくりと道を歩く。
「かずくん。ふるーつぎゅうにゅうのみたい」
「さっきアイス食っただろ?今日は我慢しなさい」
「じゃあ、こーひーぎゅうにゅう」
「一緒だろ?」
「あじがちがう」
「味だけだろ?」
「むう…かずくんのばか」
「お前がお腹壊すから言ってんだろ?もう…」
「んー!んー!」
「はいはい…明日な」
剥れながら、それでも俺の手を離さない。
「あっそお?じゃあ手離すよ?」
「あーっ!いやーだー!」
「ほらぁ…じゃあ、言うこときくよな?」
「…はぁい…」
剥れる翔も可愛かった。