第5章 birdcage
でも…
翔の顔を見ると、俺をまっすぐ見上げてる。
「今は…無理かな…」
「そ。わかった」
「ああ…ここで回せればいいかな…」
「ふふ…ありがたいわね。私としちゃ…」
「だって、ここ、いいハコじゃん」
「ありがとね…」
後ろに立ってる風間も、なんか表情が緩んだ。
笑ってるのなんて初めて見た…
「ま、ありがたい話だけどね」
「向こうは相当アンタのこと気に入ってるわよ」
「へ?」
「ま、そのうちアンタの前に現れるかもね」
ガオは紫煙を吐き出すと、また翔の頭を撫で始めた。
翔はいつの間にか目を閉じて、されるがままになってる。
「カズ、大事にしなよ…この子…」
「おん…わかってるよ…」
ガオはちょっとだけ笑うとタバコを消して、席を立った。
風間がぺこっと俺に頭を下げて、その後に続いた。
俺もぺこっと頭を下げておいた。
侑李のくれたドリンクはぬるくなってた。
帰り道、翔と手を繋いで歩いた。
大きな月がぽっかりと道路の向こうに見えた。
翔は夜中だったから眠そうだった。
「翔…まだ寝るなよ?家、すぐそこだから…」