第5章 birdcage
ガオは向かいのイスに腰掛けると、ワインを一口飲んだ。
「で、カズ。いつから回せそうなの?」
「ん。コイツがここに慣れたら、かな」
「なに、この子いつも連れてくる気なの?」
「うん。俺が面倒見てるからね」
「へえ…いいね」
「いいだろ。俺の恋人だもん」
「そっか…いいね」
「いいだろ…」
ガオは翔に手を伸ばして、髪をさらさらと撫でた。
翔は不思議そうに、ガオを見上げている。
「いい子じゃない。ちゃんと面倒みるんだよ?」
「おう…コイツは俺が幸せにするんだ」
「ふふ…いいね」
「いいだろ…」
ふとガオの目が遠いところを見た。
「幸せに…なりなよ…」
「うん…」
翔が気持ちよさそうに目を閉じた。
ガオはまだ翔の頭を撫で続けてる。
「この子…かわいいね…」
「かわいいだろ…」
ガオはふふっと微笑むと、タバコに火を点けた。
「和、あんたさ、音楽で食ってく気はあんの?」
「あ?なんだよいきなり…」
「ここよりも大きいハコで回さないかって話が来てんだけど」
「え?」
「どうする?アタシの知り合いのハコなんだけど」
どうするって…
そんな話、乗らないわけにいかないだろ…