第5章 birdcage
侑李が俺たちにドリンクをもってきてくれた。
「お、サンキュ」
侑李はにっこり笑うと、またフロアを戻っていった。
「ありがたい。奢りかな…」
壁際のソファに座っていると、常連たちが次々に挨拶してく。
一個一個応えながら、俺と翔はぴったりくっついて、ただ雅紀の出す音に聞き入っていた。
「翔、俺もね、雅紀みたいにあそこで音楽出すんだよ?」
「かずくんが?」
「そうだよ。かっこいいだろ?」
「おと、みみいたい」
「ははっ…だよな」
俺は翔の耳を塞いでやった。
そのまま翔は俺の膝に頭を載せた。
片方の耳を覆いながら、俺は翔の温かい熱を感じていた。
「よ、カズ」
女の声が聞こえた。
顔を上げると、男が居た。
「おお…ガオ…」
ガオはここのオーナーで、女だけど男装してる、ちょっと変わった人だ。
「なにこんなカワイコチャン連れて来てんのよ…」
「いいだろー。デラベッピンだろ…」
「カズ…古い…」
「はい、すいません」
ガオが手を上げると、すぐにスーツを着た男が灰皿とワインを持ってきた。
「ありがと、風間」
「はい」
風間はすぐにガオの背後に立った。
ボディガードなんだと。