第26章 petrichor
外に出ると、まだ雨はシトシトと降り続けていた。
傘は、きちんとした傘で返すのはいつでもいいってことだった。
ありがたく拝借することにした。
じいさんたちはそれぞれ傘を持っていたから、大丈夫なようだった。
さすが年寄りだ。準備がいい。
「ほら、翔。さようならしような」
「はーい!」
ぺこりと翔は頭を下げた。
「おじいさん、ありがとうございました!」
「うん…元気でね。翔くん…」
智にそっくりなじいさんは、翔の手を握った。
その手に何かを握らせていた。
「これ…」
「ふふ…これね、お守りだよ。もう転ばないように」
「俺たちの住んでる国のお守りなんだ…受け取ってよ」
ジュンじいさんが、俺に笑いかけてきた。
「あ…なんかすいません…」
「あーりがとっ」
翔はがばっといきなり智に似たじいさんに抱きついた。
「わあっ!翔、なにしてんだっ!」
「はは…いいよ。大丈夫だから…」
じいさんは、慈しむように翔の背中を撫でた。
「きっと、このお守りが守ってくれるからね…翔…」
「うんっ」
元気に答えると、翔はそのお守りを首に下げた。
なんかネックレスみたいになってるやつだった。
「きれい…」
「そうだろ。大事にするんだよ?」
「はあい!」
翔が良い返事をすると、みんな笑った。
「和也くん…君にも」
そう言って、ジュンじいさんは俺にも同じものを首から外してくれた。
「神のご加護が…ありますように…」