第26章 petrichor
教会は古いもので、でもしっかり手入れをされてる感じで、現役な感じだった。
「んだよ…どうしよう…」
一応、門はオープンになってる。
恐る恐る木の門を潜って中に入ってみた。
都心の教会だけど、敷地は広い。
ぐるりと長い塀で囲まれてる中には、木がたくさん植えられてて。
遠くから見ると森みたいに見えた。
前庭には、仮設っぽい小屋があって。
中には人形が置いてあった。
リアルすぎて、ちょっとちびった。
あ、クリスマだから、キリストの生まれた馬小屋を再現してんのか。
「一応、手をあわせておくか…」
なんまいだと唱えてから、キョロキョロ見渡してみたけど、人の姿は見えなくて。
「すいませーん…」
キョドりながら、教会の本堂…?つーの?礼拝堂だっけ…
そこのドアを開いた。
「あ…」
人が、居た。
「あの…すいません」
なんだか陽気な格好をしたじいさんが二人いた。
真夏か、みたいな格好だ。
陽気な柄のTシャツに、ペラペラの麻のチノパン。
一応ダウンは羽織ってるけど。
それと、すんごく地味な格好をしたじいさんが一人。
地味な色のシャツに、地味なニットのベスト。
手には、脱いだカーキのコートを持ってる。
一斉に俺のこと見ると、三人共驚愕した顔をした。
「かずなりくん…?」
「へ?」
なんで俺の名前知ってるんだ?
地味な格好をしたじいさんは、ずっとびっくりした顔で俺のこと見てる。
陽気な格好をしたじいさんは、すぐに落ち着きを取り戻すと、俺に向かって手招きした。
「翔くん、ここにいるよ…」
「え?」
慌てて椅子の間の通路を走っていくと、一番前の椅子に翔が寝かされてた。
「翔っ!もうなにやってんだよっ!」