第26章 petrichor
アスファルトから雨の匂いがしたかと思ったら、パラパラときた。
「げ…最悪…」
もちろん、傘なんか持ってない。
焦ってスマホを見ると、翔の位置を示す赤いマークは動き続けている。
「あいつも傘持ってないじゃん…」
そんな土砂降りにはならなかったけど、ずっと雨はパラパラパラパラと、このまま本降りになりそうだった。
今日は暖かかったけど、急に気温まで下がってきた。
「まずいな…」
アスファルトに落ちる雨の模様を踏みしめながら、必死に走った。
でも、翔の姿は見えなくて…
「どんな速さで動いてんだよっ…」
俺の足じゃ、どうしても追いつけなくて。
「はあっ…もおっ…無理っ…」
息もすごい切れちゃって。
雨宿りのために、近くのタバコ屋の軒下に入った。
慌てて雨の雫を払って画面を見たら、翔も止まってる。
「どっかで雨宿りしてんのか…?」
あいつらの家まではまだ距離があるし…
あの辺、なんかあったっけ?
とりあえず、今のうちに追いつこうと軒下を飛び出した。
走って走って追いついたけど…
「んあ…?」
翔がいるって指し示されてる地点にあるのは、教会だった。
「おーう…キリスト…?」
なんでだ…なんでこんなとこにいるんだ。