第26章 petrichor
翔はどうやら、この教会の前で派手にすっ転んだらしい。
じいさんたち三人はどうやら知り合い?みたいで、ここの教会にある墓の墓参りにきてたようで、翔を発見して保護してくれたんだって。
俺の名前を知ってるのは、翔が喋ったんだろう。
「あ、かずくん」
「あ、かずくんじゃねえだろ!おまえ…勝手に走るなっていつも言ってるだろ!?」
「あう…ごめんなさい…」
足首を擦りむいてて、じいさんたちは治療を教会の人にお願いしたとかで、すぐに教会の牧師さん?みたいな人が救急箱を持って入ってきた。
「ああ…お知り合いの方ですか?」
「ええ。すいません。こいつの保護者です。ご迷惑おかけしました」
俺にしては上々な挨拶ができたんだが、翔はしゅんとしてなんにも言わないで寝転がってる。
「翔!ちゃんと起きてお礼言えよ!」
「あい…ありがとう…」
牧師さんだけに頭を下げるから、じいさんたちにも頭を下げさせた。
「ほら、おじいさんたちにも!」
「あい…ありがとう」
「い、いや…いいんだよ?早くほら、消毒しないと…」
「ああ。すんません。お借りできますか?」
俺がしないと暴れそうだったから、牧師さんに交代してもらった。
「翔、ちょっと染みるけど我慢な?」
「はい…」