第26章 petrichor
「おおーい!翔!」
12月の日曜の午後───
俺はあたふたと外を走り回っている。
そう。
北海道に渡って手術した股関節は順調そのもの。
今では歩行も普通にできるし、坂道で減速することもない。
だからさ、ちょっとくらいなら走ることだってできるんだぜ?
だからってさ…
「まじで…どこ行ったんだよ…」
行方不明になることなくない?
「しょお…マジ勘弁だわ…」
こんな時のために、翔にはGPSで追跡できるアプリを入れたスマホを持たせてる。
さっきからそれで翔の後を追っているんだけど、一向に追いつけないでいる。
今日は、休みだったし。
Stormの仕事も入ってなかったから、ふたりで潤と智の家に遊びに行く約束をした。
そう、雅紀の会社の下のあの家。
もうすぐ着くいうときに翔がどうしてもコンビニ行きたいって言い出して。
「何でそんなにコンビニなんか行きたがるんだ…」
すぐ着くから、だめって言ったらさ。
”もういいです!ぼくひとりでいってくる!”
なんつって、全力疾走で俺の前から行方不明になった。
「もお!翔ーーーー!どこにいるんだ!」
で、土地勘もないとこで、スマホの画面を見ながら翔の後を追っかけてるってわけ。