第24章 特別短編 和也と翔
初めてavidのメンバーを画像で見たとき驚いた。
俺たちにそっくりで…
でも俺だけ居なかった。
avidは最初のツアーが最後のツアーという伝説のバンドで。
それまで覆面で活動していたが、ある日突然そのヴェールを脱いだ。
かと思ったら、あっという間にヴォーカルの二人がこの世を去って、解散になったバンドだった。
音楽性は抜群で、今は当たり前になってるようなフレーズも彼らが覆面時代に生み出したものもある。
終わり方が終わり方だっただけに、スキャンダラスなバンドというイメージもあるようだが…
音楽ファンからは未だに高い評価を得ている。
そんなバンドのアルバムの中で、この一曲だけがなんだか色が違った。
ピアノのキレイな旋律と、ボーカルのショウの温かい声…
時々、無性に聴きたくなる
「かずくん…」
翔が裸足のままで部屋に入ってきた。
「あ、起きた?」
「もお!さがした!」
「だって起こしたのに翔、起きないから…」
「ばかばかばか…」
床に座り込んでる俺の胸にぽすんと飛び込んできた。
「…ごめんな…」
きゅっと抱きしめると、ふんわりと翔のいい匂いが漂ってくる。
しあわせの匂い…