第1章 Re・Birth
どこかに行く途中だったのかな…
翔の震えは止らない。
俺の服の裾をぎゅっと握ったまま、涙をずっと堪えてる。
「わかった…今晩、俺が面倒見るよ…」
「ごめんっ!ニノっ…」
雅紀が片手で俺を拝む。
雅紀は実家暮らしだし、智と潤は一緒に暮らしてる。
俺んちしかないじゃん…
「明日、恵和学園の連絡先とか調べといてよ。なんかわかったら俺に連絡ちょうだい?」
「わかった…わりいな、ニノ…」
「いいよ…仕事柄、こういうのの扱い慣れてるから…」
俺の職業は、福祉施設の職員。
翔みたいな障害児の世話をしてる。
好きでなったわけじゃない。
親の会社だからだ。
跡を継げってしつこくて…
音楽じゃ食っていけないから、しぶしぶ今の仕事をしてる。
「翔…今日は俺のお家行こうね?」
翔が俺を見あげる。
その瞳からぽろりと涙がこぼれ落ちた。
「おにいさん…」
「やめろよ…俺の名前は和也っていうんだ。カズって呼んで?」
「かず…?」
「そうだよ。大丈夫、怖くないよ?さ、手つなご?」
手を差し出すと、おずおずと握る。
「じゃ、後頼むわ。パニック起こしてるから、休ませたいし」
「すまんニノ…よろしくな」
雅紀が財布から一万円抜き出した。
俺の手に握らせると、切ない顔をした。