第1章 Re・Birth
「いやさ…ここの前をふらふらあるってたのよ…コイツ…」
雅紀が床にしゃがみこんだ。
「んで、質のわりーのに絡まれて財布盗られそうになっててさ…思わず助けたのよ…」
「珍しいことすっからだろ…」
「わりーかよ!したらさ、こいつ…連絡先ももってねえし…わかんねえんだよ…けいわ学園と名前以外…」
「まじかよ…警察いこうぜ…」
「それが…」
交番の前まで行ったら、こいつすげー暴れたんだって。
制服のおまわりなんて、俺らでも反吐が出るほど嫌だけどさ…
こいつの嫌がり方は尋常じゃなかったんだってさ。
泣いて暴れて、終いにゃ気を失って…
病院にでも連れて行きゃいいのに、雅紀はここに連れてきたんだってさ…
「で、どうすんのよ…これ…」
櫻井翔は、毛布を握ってぶるぶる震えてる。
そのくりくりの瞳に涙が溜まってる。
そっと頬に触れると、俺の目を覗き込んできた。
曇りのない、とても綺麗な瞳だった。
「翔…?お家どこ?」
翔はぶるぶると顔を横に振る。
「わからないの?」
こくりと頷くと、俺の服の裾をぎゅっと握った。
「いきたくない…」
「え?」
「おじさんのくるま、のりたくない…」
「翔…」