第22章 特別短編 愛してるよっ
それから、俺たちはやっぱりいつも通り擦りあいっこして。
とりあえずは、やり過ごしてた。
だって…どうしていいかわかんなかったし…
そんな毎日を過ごしてたある日、仕事中に雅紀が訪ねてきた。
鍵部屋に来るのは久しぶりだと、テンションが凄く上がってた。
「智ぃ!どうだ?」
「なにがだよ…なんとか生きてるよ」
カウンターでドリンクをサーブしながら喋ってると、径が裏から出てきた。
「あ!榎本さん」
「やあ…えっと、相葉さんでしたね」
「お久しぶりです」
「智、ここはいいから、暫く休憩しておいでよ」
「え?いいの?」
「いいよ。今日はそんなにお客さん居ないし」
「でも径がここやるの?」
「だめか?俺の店だぞ」
「うん…」
今日も径は薄手の赤いセーターにスエットっていう地味な格好をしてる。
でも皆、この地味な男がこのクラブのオーナーだって知ってるし…ま、いっか。
昼間、径の営業活動を手伝いながら、事務仕事なんかして…たまにこの鍵部屋で夜も働いてる。
給料はまあまあ出してもらってて、他のバイトくんたちにはちょっと悪いなって思ってる。
一緒にカウンターに入ってた手越くんにちょっと詫びを入れると、いいっすよ~と軽い返事を返してくれた。