第21章 is a rose…
「んーんー!」
「んーじゃないの…もう。飯…」
「おかあさん…」
「え?」
ぎゅううっと翔は抱きついてきた。
「ぼくおにいちゃんになりたい…」
「翔…」
その日は、翔は急に元気がなくなってしまって。
寝る時も俺にしがみついて離れなくて。
なにか、昔のこと思い出したのかな…
翔の過去は、役所の記録でしかわからない。
何があったのか、知る人は一人も居ない。
今、翔が何を思い出して元気がなくなっているのか、俺にはわからない。
それがもどかしい。
次の休みも、翔の気分は晴れない。
ベッドから起き上がらず、布団を被って動かない。
「翔?公園でも行くか?」
「…いーや…」
そっと横に潜り込んで抱っこしてやると、翔は俺の胸に顔を擦りつけてくる。
「翔さーん…?」
「んー…」
「ご機嫌治してくださいよぉ…」
「むー…」
翔の髪にキスして顔を覗きこむ。
「翔…俺、翔がいるだけで幸せだよ?」
「んー…」
「翔は俺だけじゃダメなの?」
「かずくん…」
ぎゅうっと抱きしめると、翔は俺にしがみついた。
「足りない?俺だけじゃ。赤ちゃん欲しい?」
「…うん…」
「じゃあ、俺のおにいちゃんになってよ」
「え?」
「俺が赤ちゃんになってあげる」