第21章 is a rose…
「あっ…かずくんごめんなさい…」
やっと翔は気づいて、俺の隣に走ってきた。
腕を取ると、ゆっくりと歩き出した。
「おまえねえ…いくら嬉しいからってはしゃぎ過ぎ」
「ごめんなさぁい…」
そういうと俺の頬にふんわりとキスをした。
「ばっ…お前…こんなとこで…!」
「えへへー」
蕩けそうな笑顔を見せると、甘えるように翔は俺に凭れかかった。
「あ…歩きにくい…」
病院につくと、聞いていた病棟を探す。
ゆっくりと歩いて行くと、だんだんかわいい雰囲気になってくる。
産婦人科の病棟なんて初めて入る。
病室に行く途中に新生児室があった。
ガラス張りのそこをちらりと覗いてみたけど、どれがガオの子かわからなかった。
皆、猿みたいに小さかった。
「あかちゃん…」
翔が窓ガラスにべったり貼り付いて動かない。
うっとり赤ん坊を眺めている。
「翔、後でまたくるから、先にガオに会いに行くぞ」
「んー…」
10日程前、ガオは赤ん坊を産んだ。
女の子だ。
俺たちはやっと面会できると聞いて、今日早速やってきたのだ。
引きずるように翔を連れてガオの病室へ入った。
「ガオ?」
声を掛けると、ガオのベッドのカーテンが少し開いた。