第20章 特別短編 俺達の道
「あ…あれか…セックスボランティアってやつか…」
「そ。そういうふうに割りきって考えてみたら?」
「でも…」
「翼さ…まだ滝沢のこと忘れられてないんじゃないの?だから雅紀なんじゃないの…?」
「え…?」
「だって、風間のこと襲うような真似、しなかったんだろ?」
「まあ…そう聞いてる…」
「…そう無下にしてやんなよ…あいつに発散する場所なんて、ないんだから…」
そうは言われても…
今更、翼と肉体関係を持つようなこと…できるかよ…
「翼は、上手く言えないんだろうけど、お前じゃないとだめなんじゃないかな…」
「え…?」
家に帰って、ぐっすりと眠る翼の顔を見つめた。
こいつは上手に自分の思ってることを表現できない。
こいつは俺達みたいに自由に、肉体の欲を発散することもできない。
確かに…できないことだらけだよなあ…
「ん…にーちゃ…」
「ありゃ…起きちゃった?」
「にーちゃ…だっこ…」
「ん…おいで?」
俺によじ登るように起き上がると、しがみついてまた翼は眠りについた。
こてんと突然重くなる体重になんだか幸せを感じた。
「秀明…俺、どうしたらいいんだろ…」
ぽつり闇に向かって呟いてみる。