第20章 特別短編 俺達の道
「じゃあ、お宅の息子は預かった。返してほしくば、無事に赤ちゃんを産め」
「ば、ばか…」
軽く手を振ると、車を発進させた。
「翼ー?」
「んー?」
「いいの?パパとママんとこ居なくて」
「にーちゃといっしょにいたい」
「え?」
「あかちゃんくるまで、にーちゃといっしょにいる」
翼はにこにこと俺の顔を見上げた。
「な、なんだよ…それ…」
翼には翼の考えがあるんだろうけど…
その思考は、俺には全く理解ができず。
まあ、翼が寂しい思いさえしなければいい。
俺達の意見はそれで纏まっていた。
「わかった。じゃあ一緒に風呂入ろうな」
「うんっ!」
翼はばたばたと足を動かした。
預けた頃よりも、だいぶ手足はしっかりしてきてる。
ガオや風間に可愛がってもらってるっていうのが、凄くよく分かる。
あんな狭い部屋に閉じ込められてたんだもんな…ずっと…
家についたら、メイドに部屋の支度をさせた。
その間に翼の荷物の整理。
「翼、ここにお前のものを入れるボックスを作ったから…これからは自分のものはここから取るんだよ?」
「はあい」
一緒にボックスに翼の荷物を入れて、一息ついた。
屋敷は広いから、翼と俺が住むのは一番狭い離れにした。
こじんまりとした洋館は、昔じいさんが静養するのに使ってたそうだ。