第20章 特別短編 俺達の道
侑李が旅立ってからも、俺の日常は相変わらずだった。
音楽とデザイン。
そんなものに囲まれて、日々が流れていく。
時々空を見上げて、秀明のことを思い出す。
俺達が出会った意味は、何だったんだろうな…
たった一日…一緒に過ごしただけの男。
たった一日…愛しあっただけの男。
なのになんで俺は忘れられないのだろう。
その日はガオに呼ばれて、昼間なのにGravityを訪れた。
「雅紀、お疲れ様」
ガオが気だるそうに迎えてくれる。
「どうした?顔色悪いぞ?」
「ん…ちょっとね…」
いつもは暗い店の奥のベンチに通される。
「で?改装したいんだって?」
「うん。ちょっとね…半年ほど休業しようと思って…」
「へえ、そりゃまたなんで…?」
「まだ半年ほど先の話なんだけどさ…」
風間がフロアに入ってきた。
トレイにコーヒーカップが載っている。
「あ、風間。お疲れ」
「相葉さん、お疲れ様です」
ことりとカップを置いてくれると、風間はガオの後ろに立った。
「生まれるんだ…」
ガオがぽつりと呟いた。
「え?何が?」
「だから…赤ちゃん…」
風間がばたっと後ろにひっくり返った。
「ち、智津ちゃん!?」
「だーっ!だからその呼び方すんなって言ってるだろ!」