第19章 特別短編 あの日から…
「なんだか他人とも思えないしね…どう?お茶の一杯でも」
そう言って、智にそっくりなじいさんは俺たちを家に誘ってくれた。
そこは都心の一軒家とは思えないほど、のんびりとした家で。
敷地のほとんどが庭で、家は平屋の小さなものがポツンと建っている。
家に続く砂利が敷いてある道を歩いて行くと、両サイドには時々、花が植わっている。
隣との境目には大きな木が植えられていて、夏でも心地いい日陰を作ってくれそうだった。
建物はL字型で、Lのくぼみにはテーブルが出してあって、ボンボンベッドまで置いてある。
庭のテーブルで待たされる間、俺にそっくりなじいさんはなんだか懐かしそうに俺たちを見ていた。
「あの…もしかして、あの人とは結婚してるんですか…?」
「え…よくわかったな」
「あは…俺らもそうなんで…」
「え…そうなのか…」
そういうと、ますますじいさんは俺達に興味が湧いたようだった。
「へえ…おじいさんたち、ミュージシャンだったんですか」
「一応ね…でもなんだかんだ疲れちゃってね…引退しちゃったよ」
その後は、お世話になった事務所の仕事をずっとしてたんだって。
今日はそこの事務所の社長さんのお葬式だったのだと、聞かされた。