第3章 fact
「それがなんで人身売買になるの…」
雅紀が呆然とした顔で聞いてくる。
「ん…まあ、隠蔽だよね。恵和が解体するとき、障害者にそんなことまでさせてたってわかることを恐れた幹部がいて…それで早い段階で地下クラブに…翔を売ったんだ」
まさか俺の勘が当たるとは思わなかった。
石井先生の話によると、翔は恵和が解体するだいぶ前に、行方不明になったそうだ。
警察に届けたけど、捜査はしなかったらしい。
俺の勘だと、買ったのが警察関係者だったから…じゃないだろうか。
障害者の行方不明事件なんて、掃いて捨てるほどある。
翔は探す身内がいなかったから、誰も行方を詮索しなかったんだ。
「多分…またどっかに売られるか、逃げてきたかで、あん時雅紀と出会ったんだと思う」
「そんな…」
潤が口元を覆った。
「ま、そんなことでさ…俺、暫く翔の面倒みるからさ、Gravityには暫く顔出せなくなるのよ」
「え…?和…」
「頼むよ?俺んとこ、空けといてよ?いつでも戻れるように…」
「でも…和、それは…」
「いいって…雅紀。俺は、翔の面倒見るって決めたんだから」
「和っ…」
「なんだよ…いいだろ?別に…」
雅紀が拳を握って立ちあがった。