第16章 rebirth
雅紀の流す音の渦…
その渦にたゆたいながら、俺と翔はベンチに座っていた。
ガオがタバコに火をつける。
翼は風間の膝で眠ってしまった。
「榎本さん、また来てたね…」
「うん…まあ、ありがたいことだよ…」
「よっぽどアンタ達に惚れてるんだね」
「俺たち…?」
「うん…アンタだけじゃなくて、皆いい音出すようになったって言ってたよ」
「へえ…そっか…」
ガオは俺の顔を見て、微笑んだ。
ちょっと、丸くなった気がする。
「翔…?」
「はあい?」
「和也のこと、好き?」
「うん…」
もじもじと頷くと、下を向いてしまった。
「おま…なんかリアルな反応すんなよ…」
「むふー」
ふにふにと翔のほっぺをつねっていると、ガオはころころと笑った。
「カズ…大事にしなよ…?翔のこと…」
それは、前にも言われたセリフだった。
「ああ…大事にしてるよ…」
ぎゅっと翔の顔を持ち上げた。
「だって俺の大事な恋人だもん」
にへーっと翔が笑う。
猛烈にキスしたくなったけど、ここは我慢しといてやる。
「じゃあ…今日は早いけど、行くね?翼居るから…」
「ああ、おやすみ。また来週」
風間がぺこりと頭を下げていく。
翼は安心しきった顔で、風間に抱っこされていた。
三人、まるで親子みたいにフロアから去っていった。