第16章 rebirth
煩いほどの音の渦。
クラブで俺は音楽に揺蕩ってた。
耳がイカれてしまうほどの大音量のなかで、身体が宙に浮いてしまいそうな程キモチイイ。
「おーい!和也!」
DJ仲間の潤が、俺を呼ぶ。
「ああ!?邪魔すんな!この曲、聴いてんだよ!」
「ちげーんだよ!ちょっとこいって!」
「あんだよ…めんどくせえ…」
俺は翔の手を引いて潤の方に歩み寄った。
「なあ!これなら俺、DJ卓登れんだろ?」
潤が持ってきた秘密兵器。
じじい杖。
「んお…ま、いいんじゃねえの?潤がいいなら…」
「名案じゃね?これがあれば、俺、多分一発で登れる」
ひょいっと潤が杖を使って車イスからDJ卓に登った。
「ほらあああ!いけんだろおおお!」
「お、おう…」
「じゅんくん、おじいちゃん?」
「しー!言うな!翔!」
別に棒状のものであれば何でも良かったと思うんだけど、潤はじじい杖になぜか愛着を持っていて、手放そうとしない…
「ひょおおおお!いい眺めだぜ!」
卓の上で、潤は大はしゃぎだった。
来年の春、再手術を受けることになった。
潤は歩けるようになるらしい。
雅紀がいい病院を探し当てて、受診したらそう診断された。
それから潤のおおはしゃぎは止らない。