第3章 fact
直後に雅紀が来て、部屋にはいつもつるむ連中が勢揃いした。
「和、どうしたんだよ…?」
雅紀が座りながら聞いてくるけど、すぐに言葉が出てこなかった。
「翔のこと、なにかわかったの…?」
「うん…」
冬にはこたつになるはずのテーブルは、今年はそのままで。
寒い室内には電熱器が一個転がってる。
エアコンなんて上等なもの、ここにはない。
皆、外からきたまんまの格好で座ってる。
「翔のこと、知ってる人がうちの施設に居たんだ…」
「え?そうなの?じゃあなんで翔はここにいるの?」
潤がベッドを見ながら、こちらに近寄ってくる。
「翔は…身元引受人がいないんだ」
「え?どういうこと…?身内がいないの?」
「うん。孤児なんだって。小さいころにご両親は亡くなってるんだって」
「へえ…でもこういう障害のある人って、誰か面倒見る人って決まってるんじゃないの?」
「うん…翔の場合はね…それが…」
言葉を選んでしまう。
どうしたら…ちゃんと伝わるだろうか…
「どうも、人身売買されてたようで、はっきりしないんだよ」
「え…?」
「人身売買…って…え?今時?日本で?」
「そう。日本で」
大きな溜息が出た。
そうだよな…理解できないよな…