第16章 rebirth
「あいつらが結婚かあ…」
「ん?なに?」
助手席の侑李が俺の顔を覗き込んだ。
「ん…なんでもねえよ」
「良かったんですか?あの、翼くんって子、引き取ってこなくて…」
「うん…俺が面倒みるよりもいい人達に出会えたから…」
あの後、ガオと風間には翼のことちゃんと説明しておいた。
安藤にこの10年間されてきたことも…
ガオと風間はそれも含めて、きっちりと翼を育てると約束してくれた。
俺のところに居るよりもずっと翼にとって良い環境だ。
俺といたら、翼のあの性癖は抜けないかもしれない。
俺がまず翼の誘惑に勝てるか…自信がない。
それに…翼にとって父親と母親ができることになる。
こんないいことないじゃないか…
「雅紀さん…?泣いてるの…?」
そう言われてちょっと涙が滲んでるのに初めて気づいた。
「はは…なんだろな…」
ごしっと拭ってギアに手を置いた。
「運転してるんだから…泣くなら後にしてくださいよ?」
侑李の無情な声が聞こえる。
「はあい。わかりましたよ…」
ぶーたれて答えたら、そっとギアに載せた手に、手を重ねられた。
「侑李…」
「忘れられない…?」
「…ああ…そうだな…」
「じゃあ、忘れるまで一緒にいてあげます」
「…ほんと…?」
「俺が、秀明って人より魅力的ならすぐ忘れるでしょ?」