第3章 fact
殆どのスタッフは女性で。
皆、俺達の回りに集まってきてる。
その中で、俺達のほうに来ない人が居た。
石井先生…
顔を真っ青にして、部屋の隅で佇んでる。
なんだろ…あの人。
昨年末からうちの施設で働くようになって、とても明るいし気のつく女性だ。
保育士の資格も持っているから、年少担当になっている。
翔がパートのおばさんやどんぐりに気を取られている間、ずっと翔を凝視してた。
「二宮さんわかりました。それでは、皆さんミーティング…」
主任が声を掛けた瞬間、翔が走りだした。
「翔!?」
「せんせえっ…」
翔は石井先生に抱きついた。
「えっ…」
石井先生は観念した顔をしていた。
ゆっくりと翔の背中に腕を回し、しっかりと翔を抱きしめた。
「翔くん…元気にしてた…?」
スタッフルームの隣に小さな部屋がある。
これは個人面談をするときの部屋で、こじんまりとしている。
石井先生を窓辺に座らせて、離れない翔も隣のイスに座らせた。
親父も部屋に来ている。
「石井先生。翔のこと、教えてくれませんか?」
さっきから石井先生は黙ったきりで、ずっと翔の手を握って遠い目をしている。
埒があかないから、親父も呼んだのだ。
他のスタッフは、始業時間なので散っている。