第3章 fact
親父に許可を貰ったので、今日一日は翔と俺は一緒に過ごすことになった。
ビルの2階が俺の職場だ。
「おはようございまーす」
スタッフルームに入って行くと、皆興味深々っていう顔でこっちを見てきた。
「どんぐり、おいで」
どんぐりはしっぽをふりふりしてこちらにトテトテ歩いてくる。
「翔、こいつどんぐりっていうの、かわいいでしょ?」
「かわいいです!」
どんぐりは捨て犬で、ビルの前に捨ててあったのを皆で保護した。
今はもちまわりで世話をして、日中はスタッフルームで飼っている。
セラピー犬としても大活躍中だ。
「豆柴っていう種類の犬だよ。かわいがってね?」
「はあい…」
翔はどんぐりに向かってそっと手を伸ばした。
昔、飼ってたことありそうだな…
犬を触る手つきでそう思った。
「皆さん、あの。今日一日、この人、事情があって俺が見ることになって…知的障害があります。親父には許可をとってあります。ちょっと事情があって…」
「やーだ!二宮さんの彼女かとおもった!」
「ほんと!すっごくかわいいわぁ…名前はなんていうの?」
「ぼ、ぼくは櫻井翔といいます!」
「あら、ちゃんと言えたね。いいこいいこ!」
パートのおばちゃんって、世界で一番強いと思う…