第15章 hope
なんとか医師に許可を取って、俺とお父さんとで翔を抱えて川崎に向かった。
翔はぐったりと後部座席で沈んでいる。
さっきあんなに暴れたから消耗してるんだ…
しっかり横から抱えて、支えてやった。
「かずくん…かずくん…」
ぽろぽろ涙を零しながら、翔はつぶやいている。
大丈夫だ、なんていい加減なことは言えなかった。
翔はわかってる。
俺達の言葉の意味をちゃんと理解してるんだ…
翔の頭を抱えて引き寄せた。
「翔、病院につくまで目を瞑ってるんだよ?」
そう言って頭を撫でると、小さく頷いた。
和也のお父さんは何も言わない。
翔が眠ってしまうと、車内は沈黙に包まれた。
ナビの音声だけが響いてる。
潤が…
潤が事故にあった時、俺もこんな風だった。
流れ出る血を止められなくて。
閉じたままの目を開くことができなくて。
何も伝えることができなくて…
苦しくて、苦しくて夜も眠れなかった。
俺はそれを和也に救ってもらった。
だから今は…俺が翔を救いたい。
病院を出るとき、ぎゅっと潤の手を握ってきた。
和也の状況を伝えると、潤は真っ青になった。
だけど次の瞬間俺を抱き寄せた。
「大丈夫だ。大丈夫だから…智には俺がいるから」
その言葉に、また俺は救われたんだ…