第15章 hope
もちろんエレベーターなんて動いていない。
非常階段のドアを蹴破って中に入る。
新しい足跡が何個も付いている…
サイズからして安藤のものだろう。
その足跡を辿るように、身を低くして階段を上っていく。
だんだん焦げ臭い匂いが漂ってくる。
「相葉さんっ…マスクっ」
自分も装着しながら叫ぶと、すぐにまた階段を登る。
「司令っ…美樹!」
「ラジャー!」
後ろから美穂さんと由美さんの声が聞こえた。
この現場の指揮は私が取るという合図だ。
後ろを向いて由美さんに向かって親指を立てた。
由美さんが親指を立てて頷く。
これで相葉さんの保護は由美さんの仕事になった。
美穂さんが由美さんと相葉さんを追い越して私の隣についた。
顎をしゃくると、美穂さんは先に立って走っていった。
私は一定の速度を保ちながら走る。
相葉さんが遅れないように。
だんだんと濃くなる焦げ臭い匂い。
「相葉さん、苦しかったら下りて下さいね」
「わかりました…」
既に息が上がって苦しそうだが、まだ頑張るらしい。
5階の踊り場から美穂さんが手を振る。
現着した。
後ろの二人に手を振ると、無言で私たちは進んだ。
身を低く、そして足音も最小限に。