第15章 hope
首都高環状線に乗り、荏原で降りる。
ここからは下道を走る。
早く早くと何故か心が焦る。
安藤が姿を簡単に現したことが引っかかっていた。
なにか、起こっている。
長年の勘がそう言っていた。
美穂さんも、由美さんもそれは感じているだろう。
じりじりと車内に焦りが積もっていくようだった。
「和は…無事なんですよね?」
相葉さんが確認するように声を出す。
「安藤が日吉にずっと潜伏していたのなら…」
「わかりました」
「相葉さん、どうにもならない場合は出ないで下さいね」
「わかってます。足手まといにはなりませんから」
なんの訓練も受けていない人間を連れて行くのは、博打と一緒だ。
どう転ぶかなんて、わからない。
誰も、だ。
でもこの人は依頼主で、私達のスポンサーでもある。
私はこの人を守り切る要員で、志願した。
それを気づかせないようにしなければ。
日本人の男は、無駄にプライドが高い。
「着きます」
安藤が現れた商店街に着いた。
そして安藤が消えたと思われる地点に車を向ける。
「これ…廃ビルですね…」
「来月取り壊し予定だ…こんなわかりやすいところにいるなんて…」
由美さんが舌打ちをした。
安藤が隠れる場所だからと、穿ち過ぎていた。
簡単な場所、シンプルな場所。
そこが一番隠れやすかったのだ。