第3章 fact
「後な…これは推測なんだけど…」
「なんだよ…怖いな…」
白髪の混じった頭を撫でながら、親父はまたソファに腰掛けた。
「こいつ、警官に買われてたんじゃないかと思う」
「え?警官に?」
「制服のおまわりみた後、”おじさんがいたいことする”って言ったんだよ…」
「痛いこと…?」
「コイツの身体には、ロープで縛ったような痕と…」
「痕と?」
「ケツの穴、切れてる」
「え?」
「性的虐待、受けてた可能性ある」
福祉施設で…
ない話じゃない。
職員が、入所者の女の子をレイプした話は、珍しい話ではない。
それは女性に限らず、男性のことだってある。
つまり、知的障害者は証言することができないから、性的虐待し放題なのだ。
福祉施設にかぎらず、障害者を受け入れている一般企業ですら、同じことが起こった。
代表的なのが、水戸事件だ。
だいぶ昔の話だが、ここは社長まで知的障害のある女性社員をレイプしていたのだ…
表に出にくい、極めて非人間的な犯罪。
日本のアンダーグラウンドには、こんな話、うようよある。
表に出にくいだけで、障害者に対する性的虐待は、日常で行われている。
「性的な、虐待ね…」
親父はぎゅっと手を握った。
何か、遠くを見るように顔を窓に巡らせた。