第14章 burn
寝ている安藤の枕元に、蓋を締めたペットボトルを転がしておく。
後は、待つだけだ。
シューシューと気体が漏れる音がする。
メリメリっとペットボトルが段々変形する音も聞こえた。
俺は殺虫剤のスプレーを握って、ライターを構えた。
近くにガスの小さなボンベも置いてる。
最悪、これを使うしかない。
テレビの前で蹲って、その時を待つ。
メリっという音が聞こえたかと思ったら、強烈な炸裂音が聞こえた。
獣のような声を上げて、安藤が部屋から飛び出してくる。顔中にペットボトルの破片が刺さり流血している。
耳からも血が出ていた。
鼓膜、やられたな…
安藤は俺の姿を見ると、この世のものとは思えない形相になった。
「和也ぃ…てめえええ…」
俺は安藤の顔を見ながら、残っていたシャブを全部、電熱器の上に落とした。
ぼうっと炎が上がってシャブは燃えていった。
「…なにしやがる…なにしやがんだこのやろおおお!」
安藤は俺に向かって走ってきた。
でもその足元には張り巡らせたワイヤー。
安藤は足を取られて、俺の前に転がった。
「てめえ…小細工しやがって…」
シャブを失ったことで、安藤は自分も失ったようだった。
目が血走って、もう人間じゃないことがわかった。