第14章 burn
まだ支えはいるけど、潤の足は少し力が入るようになっていた。
これならリハビリしていけば、足は引きずるけど自立歩行ができるようになるかもしれない。
「へへ…ま、世の中悪いことばかりじゃないってことだな…」
潤は雅紀の肩に手をついて、車イスに座った。
雅紀の目に薄っすらと涙が溜まった。
「泣くなよ…」
「な、泣いてなんかないもんっ!」
「泣いてるじゃねえか…」
二人で突っ込むと、雅紀は顔をゴシゴシ擦って、先に立って歩き出した。
病室は、すごく静かだった。
潤のとこは外科病棟だから、怪我以外皆健康な患者ばかりで。
でも翔の入院する病棟は…精神科の病棟に近いところで…
なんだか静かすぎて、耳が痛い。
「翔…?」
俺と潤が話しかけても、翔はベッドに寝たままぼんやりとしている。
潤が外に出ていた翔の腕を取ると、やっと俺たちに気づいた。
手を握ってやると、翔は弱々しく微笑んだ。
「さとくん…じゅんくん…」
反対側の腕は、点滴の管が刺さってた。
でっかい点滴の袋が、上にぶら下がってる。
「翔、俺達のこと覚えてたの?」
潤が嬉しそうに翔の髪を撫でた。
「うん…じゅんくんげんき、よかった…」
そう言って微笑む翔は、消えてなくなりそうだった。