第14章 burn
5、6回絞りとってやったら、安藤は眠ってしまった。
俺は起き上がると、散乱してるゴミの中からペットボトルを取り出した。
それから31の袋に入ってるドライアイス。
これで音だけは充分な爆弾を作る。
今の安藤には良く効くはずだ。
薬のせいで、あらゆる器官が敏感になってる。
音もそうだ。
ちょっとした物音でも安藤には大きく聞こえているらしい。
”和也…”
昨日の夜から、どこからか俺を呼ぶ声が聞こえてる。
”無茶するな…帰って来い…和也…”
どこか懐かしい声…。
誰の声だったか。
翔の声にとても似てる気がするけど、翔が俺のこと呼び捨てにすることはないし…
第一、こんなところに翔はいない。
”和也…お願いだ…こっちに来るな”
声は、だんだん切羽詰まったものになっている。
大丈夫だよ…翔…
これから本当の意味で自由だ。
強く、生きていくんだぞ。
ドライアイスをハンマーで砕いてボトルに詰めていく。
革手袋をしているが、冷たさに指がかじかんで上手く入らない。
音があまり大きくならないよう細心の注意を払った。
ゆれる白い気体をぼんやりと眺めた。
安藤を殺せたら、後は。
いい。