第3章 fact
次の日、施設に翔を連れて行った。
翔は緊張で身体がガチガチに固まってた。
「翔、大丈夫だよ。今日は俺とずっと一緒にいるからね?」
「いっしょ?かずくんといっしょ?」
「そうだよ。だから心配しないでね?」
「わかった…」
施設は10階建のビル。
ここはうちの持ち物。
だからって、俺はボンボンではない。
金持ちは親なのであって、俺ではない。
だからあんなボロアパートに住んでるんだ。
オートロックの玄関を鍵を差し込んで開ける。
中からは、職員でないと開けられないようになってる。
外からも同様。
鍵がないと自由に出入りはできない。
中に入って行くと、既に出勤していた職員から挨拶がくる。
俺は一応、オーナーの子息として扱われているが、組織の中ではペーペーの職員。
だってなんの資格も持ってないんだもん。
パートのおばちゃんのほうが、ここではよっぽど偉い。
「親父、来てます?」
「ええ。会長室にいらっしゃいますよ」
10階の会長室まで翔を連れて行く。
今日一日、俺と一緒にいることを許可してもらうためと…
恵和学園のことを聞くために。
会長室のドアをノックする。
「親父、俺」
「ああ、入れ」
翔の手を引いて、会長室に入った。