第3章 fact
泣き止んだ翔の顔は、ぽんぽんに腫れていた。
「ぶっ…ふふふ…」
「なにわらうですか…」
「いや…なんでもね」
凄く綺麗な顔してるのに、むくんだ顔みてると、なんだか笑いが出てきて。
「いやっ…かずくんわらっちゃいやっ…」
バカにされているのがわかるのか、俺をぽかぽか殴ってきた。
「わーかったからっ…」
翔の両腕を掴んで押し倒した。
「かずくんのばか」
俺に両腕を掴まれたまま、翔はぷいっと横を向いた。
「ばかって言わないの」
「…ごめんなさぁい…」
「ん。わかればいいよ」
「翔…?」
「はあい」
「翔…」
「……?」
翔の腕を引き寄せると、俺は翔をぎゅううっと抱きしめた。
なぜだかわからない。
雅紀の想いは、受け止められない。
だけど俺は…
こいつの思いなら、受け止められるかも知れない。
「かずくん…」
翔は俺の身体に腕を回して、俺のことぎゅっと抱きしめる。
俺よりも広い胸板。
俺よりもたくましい腕。
包まっていると、懐かしいという感情が湧いてくる。
なんでかはわからない。
わからないけど、俺と翔は、離れられないんじゃないかと思った。
いや、離れてはいけないんじゃないか…
そう思った。