第13章 these
「なんで最初に雅紀を助けようと思ったんだろ。不思議でさ」
「…ああ…」
「…安藤が忘れられなくてだったよね…だけど愛されなかった…」
「ああ…だから意趣返しって意味もあったんじゃないかな」
「そっか…でも安藤のことって…愛してたわけじゃないよね?」
「さあな…そればっかりは本人に聞かねーとな」
その秀明という人は、満たされてなかったわけで。
俺に振られて満たされて居なかった雅紀と、どういうわけか愛しあうことになる。
「こんな事件がなきゃ出会えなかったし、死ぬこともなかった…秀明のことは夢だったんじゃないかと思うよ」
雅紀は潤んだ目をごまかすように、湯船に潜った。
「そっか…」
今は安藤を捕らえることを目標にしてなんとか保っているけど…
この先の雅紀が心配だった。
だって、俺がもし翔を失ったら…こんなに冷静でいられないと思うから。
「雅紀…大丈夫?」
潜ってしまった雅紀からは、返事はなかった。
風呂を上がったらまた大騒ぎで。
翼がフルチンで出ていこうとするから3人がかりで押さえつける。
外にいる女性たちに見せるわけには…
「つーばーさー!いい加減にしろっ…!」
「やー!やだあああ!」