第3章 fact
「なんで?ぼく、かずくんきもちよくしたい…」
「なんっ…でだよおっ…」
その間も翔の手の動きは止まることがなくて。
突き上がってくる衝動を必死で抑えようとした。
「俺は、おじさんじゃねえぞっ…」
翔の動きが止まった。
「…翔?」
「あ…ぅ…ちがう…かずくんちがう…」
「どうしたの…翔…?」
ブカブカのスエットの裾を掴んで、翔は後ろに下がっていく。
「ちがう…かずくんはちがう…」
「え?なんだよ…どうしたんだ…」
「ぼくにいたいことしない。ぼくかずくんがだいすき…ずっといっしょ…」
「え…?」
そのまま翔は丸まって泣きだした。
「翔…どうしたんだよ…」
俺はまた、途方に暮れた。
興奮した身体…
意思の疎通のできない男…
その男に襲われそうになった俺…
一体なんだってんだよ…
「わかった…わかったから…泣くな…?翔」
「かずくん…かずくん…」
翔の震える背中を抱きしめた。
「怖いことも、痛いことも、俺と一緒ならないからな…?」
「かずくん…」
「お前のこと、守ってやるよ…」
なんで…
なんでこんな言葉が出たのかわからない。
でもそれは、俺の紛うことなき本心だった。