第11章 will
「それに、翔を拾ってきたのは俺だしね…」
そう言って笑った雅紀の横顔は、淋しげで。
思わず握った翔の手の温度が、とても切なかった。
雅紀と由美さんが機械を入手しに行っている間、倉庫の一室で翔の身体からマイクロチップと発信機を取り出す準備をした。
会議用のテーブルの上にシーツを敷いて、簡易的な手術台を作った。
「多分、そんな奥深くには埋め込んで居ないはずですから…」
そう言って美穂さんは翔の身体を少し調べていた。
その間も美樹さんはずっと滝沢って人のパソコンを解析していた。
真剣な表情でキーを叩き続けている。
美樹さんの後ろから翼がそれを覗きこんでる。
「たっきーの」
「うん。そうだね。翼くん」
美樹さんがパソコンを見たまま後ろに手を伸ばし、翼の頭を撫でている。
「たっきーどこいったの?」
「お空だよ。翼くん」
「おそら…」
美樹さんはパソコンを叩きながら、翼の面倒を見ている。
なんだか気の毒になって、翼を引き取ってきた。
翔と一緒に座らせておく。
「つばさくん」
「はあい」
「おねえさん、おしごとちゅうです」
「はあい?」
「だからおじゃましてはだめですよ?」
「ううう…」
翔は子供の扱いは慣れていた。
うちで働いていたしね。恵和学園でも働いていたし…