第11章 will
「すいません…迂闊でした…翔さんの身体に発信機が埋め込まれているようです」
「えっ…」
だからいつも簡単に居所が割れたんだ…
逃げ惑っていたから、まだ翔の身体からマイクロチップを探すことができていなかった。
そのマイクロチップの他に発信機まであったなんて…
「このソフトは翔さんの居所をトレースしてます。他にバックアップを取っていなければ、もう翔さんの居所が割れるとは思いませんが、早めに発信機を外しましょう」
発信機は熱で発電する仕組みの物で、翔の体内にある限りずっと電波を出し続けているということだった。
「どうするんですか…?」
「美穂さんがやります」
「えっ…えええ?」
「すいません、一応、アメリカの医師免許もってるんで」
美穂さんは凄みのある笑顔を見せた。
問題はマイクロチップと発信機を探す機械で。
それを由美さんが調達しに行った。
雅紀が一緒についていった。
金は全て雅紀が負担するとの事だった。
雅紀は潤の病院、智の生活費、そして俺たちの逃亡費用…
全て負担していた。
さもそれが当然であるように。
一度俺が支払うと申し出たが、一蹴された。
だって、俺達から始まったことなのに、というと「その御蔭で秀明と出会えたから、それはいいんだ」と、遠い目をして雅紀は言った。