第11章 will
その日から、俺達は家に帰ることなくさすらう事になる。
安藤との決着が、長期に渡ってしまったからだ。
そしてそれは雅紀の執念でもあった。
雅紀は使えるものは全て使って、安藤を追い詰める決心をした。
それが雅紀にとってどういう気持ちだったのか、今となってはわからない。
だけど、愛する人を失った悲しみはなんとなくわかる。
雅紀の原動力はそれだったに違いない。
美穂さんと由美さんに警護されながら、相葉グループの持ち倉庫に俺たちは移った。
ここだったら安藤もノーマークだろうというところ。
どういう根拠でそう思ったかというと、雅紀が持ってきたパソコンだった。
これは憶測なのだが、安藤が俺たちの行方をいつも突き止めていたのは、滝沢というひとがやっていたんじゃないかって話で。
滝沢という人が持ちだしたパソコンには、多分警察が全部消したという、安藤の犯罪の証拠が山程入っていた。
美樹さんが安藤の居所を突き止めて、戻ってきたのは一週間後だった。
ずっと追い続けていたそうだ。
ご家庭のこととか気になったが、これが仕事だからご主人などは気にしていないそうだ。
美樹さんは、雅紀の持ってきたパソコンをみると顔色を変えた。
美穂さんの話によると、美樹さんはアメリカでコンピューター工学の権威に師事していた時期があったそうだ。
だから実を言うとハッキングなんてお手の物らしい。
3台あるノートパソコンを一時間ほどいじって、美樹さんは顔を上げた。