第11章 will
心臓が痛い。
雅紀がぼろぼろになって帰ってきた。
翼という、安藤に誘拐された少年を連れて。
雅紀は最後の別れを済ませると、泣きながら車に揺られていた。
翼は雅紀の腕の中で大人しくしている。
由美さんや美穂さんが色々世話を焼いてくれて、その日はビジネスホテルに泊まった。
とにかく雅紀たちを休ませないといけないということだった。
俺たちは二人ずつに分かれて部屋に入った。
雅紀たちが心配だったけど、翼の面倒を美穂さんが見てくれるとのことだったから、安心して任せた。
部屋にはいると、一気に力が抜けた。
翔と一緒にベッドに倒れこむと、そのまま朝まで目が覚めなかった。
翌朝目が覚めたら、布団も掛けずに眠ってた。
翔を揺り起こすと、俺達は風呂に入った。
身体が少し冷えていた。
「かずくん…さむい」
「ん。すぐ温まろうな」
そのビジネスホテルは、広いところで。
トイレと風呂は別々だった。
少し大きめの浴槽にたっぷりとお湯を溜めて、翔と二人で入った。
「うああ…熱っつ…」
「ううううう…」
なんとか我慢して、肩まで浸かった。
翔も一生懸命我慢して、俺の横に座った。
「あついですあついですかずくん」
あんまり熱くしてないんだけどな…
身体冷えてるからな…
「もうちょっと我慢して?ね?」
ふたりで湯船のなかで100数えて洗い場に出た。
髪と顔を洗って、お互いの身体を洗いっこする。